御岳山に立つ巨樹の数々
「ここは本当に東京?」と思うほど自然豊かな標高929mの御岳山頂へは、ふもとから歩いて3時間ほどです。しかしケーブルカーを利用すれば、わずか6分で到着することができます。
山頂には、古くより山岳信仰の対象であった武蔵御岳神社(むさしみたけじんじゃ)が鎮座し、登山道はそのまま参道となっています。周辺には幾つもの山が連なり、トレッキングコースとしても有名。その山中や参道沿いに、多くの巨樹が立っています。
ケーブルカー滝本駅(山のふもと側)そば、登山道(参道)入り口周辺には、3つの巨樹が立っています。まっ先に目に飛び込んでくるのが一番手前にある、幹周り約5.3m、樹齢約500年、樹高約45mの「神代銀杏(じんだいいちょう)」です。
鳥居をくぐると、幹周り約6.1m、樹齢約350年、樹高約45mの「滝本の大スギ」が左手に立っています。
どちらの樹も参道入り口そばにあるので、徒歩で登山する人たちの一息つく場になっています。これは古くから続いていて、今のように、バス、電車がないころに御岳山を参拝していた人たちも、ここで一息入れたと案内版に書いてありました。
山に向かって神代銀杏の右奥にあるのが、樹齢約150年、樹高約33mの「愛染桂(あいぜんかつら)」です。この樹は以前紹介した千本公孫樹のように、無数の幹が集まって1つの樹を形づくっているため、正確な幹周りの太さは分かりません。
参道の両側には参拝客を迎えるように、スギの巨樹が頂上まで立ち並んでいます。その数、600本以上。中には樹齢数百年、幹周り6mを超える樹もあり、圧巻、荘厳という言葉がぴったりの空間です。5本の幹が1つになったスギもありました。
山頂には神職に就く方たちが営む宿坊、住居、ちょっとした休憩処があり、集落を形成しています。「ここは天空の里……」そんな、不思議な感覚を持ちました。
山頂に向かう道中、崖の先から斜めに太く立派な幹・枝葉を伸ばしている、「神代ケヤキ」が目に飛び込んできます。
幹周り約8.2m、樹齢約1000年、樹高約30mという堂々なるサイズで、国の天然記念物指定を受けています。
神代ケヤキは個人宅の庭先に立っていますので、根元へは立ち入らないようにしましょう。
神社を過ぎ山中に入ると、名前どおりのユニークな形の枝を持つ、幹周り約6.5m、樹齢約350年、樹高約60mの「天狗の腰掛杉」があります。今は折れてありませんが天狗の座る枝は、以前は両側にあったようです。
天狗の腰掛杉はその高さから、遠く中央自動車道・元八王子バス停から見えるとの情報を、山頂にある御岳ビジターセンターで聞きました。
ここから先は本格的な登山道のため、進むにはそれなりの装備が必要です。
険しい山中を上り下りすること数十分。落差10mの「綾広(あやひろ)の滝」そばに立つ、「お浜の桂(おはまのかつら)」に辿りつきます。
幹周り約4m、樹齢約300年、樹高約38m。存在感のある他の巨樹と違い、山中にひっそりと佇んでいる印象を持ちました。先ほど紹介した「愛染桂」とあわせて、2本のカツラのユニークな名は、地元にゆかりのある文豪・中里介山(なかざとかいざん)が書いた長編小説、『大菩薩峠』に由来しているそうですが、詳細は分かりませんでした。
山道のルートによっては、先日紹介したトチノキが立つ、養沢神社方面に抜けることができます。この辺りには多くの人に目に触れていない巨樹が、まだまだ山中にあることでしょう。