フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

宇津貫熊野神社のラッパイチョウ

「宇津貫熊野(うつぬきくまの)神社」への道のりは、JR横浜線八王子みなみ野駅」から徒歩15分。このあたりは1997年に街も駅も開かれた「みなみ野シティ」というニュータウンで、整備された街並みが続きます。

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神社は斜面に位置し、低い場所に立つ鳥居から本・拝殿が鎮座する丘の上に続く階段脇に、目指すラッパイチョウは立っています。

宇津貫熊野神社のラッパイチョウ
宇津貫熊野神社のラッパイチョウ

ラッパイチョウとは、一般的な扇型をした葉ではなく、ラッパ状の葉を持つイチョウの樹を言います。

宇津貫熊野神社のラッパイチョウ

しかし、樹のすべての葉っぱがラッパ状になっているわけではありません。むしろラッパ状になっている葉はわずかで、私も見つけるのに30分~1時間ほどの時間を費やしました。時間がかかったのは、樹が立つ場所も関係しています。前述した通り斜面に立っているため、枝葉に近寄るのが容易ではないからです。

宇津貫熊野神社のラッパイチョウ

何枚かのラッパイチョウの葉を確認。地面に落ちているラッパイチョウも見つけることができました。改めてラッパ状の葉を眺めていると、何ともユーモラスなカタチ。しばし、見入ってしまいました。

宇津貫熊野神社のラッパイチョウ
宇津貫熊野神社のラッパイチョウ

私は数枚の葉しか見つけることができませんでしたが、目で見える範囲は地面付近のわずかですから、上の枝にはもっと多くのラッパイチョウがあるかもしれません。

ラッパイチョウのこれまでの報告例は、全国でわずか20件ほどです。関東ではこの樹を含め3本しか報告されていません。その他では、兵庫県熊本県大分県佐賀県、福岡県などで見つかっています。貴重な存在ということで最近開校した地元中学校の校章に、このラッパイチョウがデザインされています。

案内板によれば、ラッパイチョウ昭和天皇陛下がご結婚された際の記念樹として植えられたとのこと。樹齢は約90年、樹高は約25m、幹周り約2.1mです。

葉がラッパ状になる原因については、詳しくは分かっていないようですが、イチョウイチョウ類の中で唯一現存している種であり、生きている化石とも言われ、実際、化石も見つかっています。そのため長い歩みの中で、何らかの原因で突然変異したと考えられています。

これまで東京近郊の巨樹を訪ね、イチョウが多いことを知りました。その理由は紅葉の美しさに加え、病気、害虫、剪定に強く、痩せた地でも育つ生命力に他なりません。

このような理由から、イチョウは今から約1世紀前に原産地である中国から日本に渡って以来、全国に広まりました。東京、神奈川、大阪といった大都市がシンボルツリーとして指定し、その他数多くの市町村、大学などでも同じくシンボルツリーとなっています。

今回紹介した八王子のラッパイチョウが見つかったのは2003年。樹に詳しい方が、たまたま同神社を訪れた際に偶然発見したそうです。

私たちが普段目にしているイチョウの中にも、もしかしたらラッパイチョウがあるかもしれませんね。