住吉大社のクスノキ(大阪府大阪市)
全国に約2300社もある住吉神社の総本社、大阪・住吉大社には、クスノキの巨樹が何本も立っています。
中でも特に大きいのは、楠珺社(なんくんしゃ)と呼ばれる末社(まっしゃ)そばにある2本です。
楠珺社の社殿裏に立つクスノキは、幹周り約9.8メートル、樹高約18.5メートル、大阪市の指定保存樹となっていて、樹齢は推定1000年。古来よりこの地に立ち、地域住民のシンボル的な存在として、祀られていたことが想像できます。
実際、既に江戸時代の頃には、御神木として祀られていたそうです。巨樹のために神社がつくられた、と考えるのが一般的でしょう。一世紀を生きてなお樹勢はまだまだ元気で、根回りの太さは迫力満点。その大きさと樹勢の良さで、社殿の一部に樹がめり込んでいるほどでした。また、これまで訪れた他の巨樹と同じように、根元に白蛇が住みついているとのこと。その白蛇と巨樹をモチーフにしたお守りも売られています。
もう1本の巨樹は、楠珺社社殿の鳥居前に立っている「夫婦楠」と呼ばれるクスノキです。樹高約19.8メートル、幹周り約7.9メートル、推定樹齢約800年。こちらも社殿裏のクスノキと同じく、市の保存樹に指定されています。
名前の由来になっているとおり、幹が根本付近で2つにわかれているのが特徴です。夫婦楠も樹勢は良好。社殿前の鳥居を飛び越し、社殿の屋根にまで枝を伸ばしていました。
楠珺社と住吉大社本殿の道中にも、枯れは進んでいますが、大きなクスノキがあります。
その他の巨樹は、境内のあちらこちらに点在しています。住吉大社の紹介や見どころとあわせて、紹介していきます。
境内が広いこともあり、出入り場所はいくつかあります。今回は南海本線「住吉大社駅」を利用。駅のホームに降り立つと、住吉大社の杜(もり)が目に飛び込んでくると同時に、目前を走る路面電車が印象的でした。
大鳥居をくぐると、見るからに傾斜がきつそうな赤い橋があります。「反橋(そりはし)」が正式名将ですが、太鼓橋とも呼ばれています。
やや分かりづらいですが、橋の上から池を挟むかたちで、2本の巨樹が立っています。案内板などは見当たりませんでした。
本殿に近い巨樹は「誕生石」と呼ばれるスポットに立っていることもあるのでしょう。しめ縄が張ってありました。ちなみにこのスポット、源頼朝の子といわれる島津忠久が誕生した場所で、安産親交の対象となっているそうです。
橋を渡り終えると進行方向右側に巨樹があり、こちらもしめ縄が張ってあります。橋から先のエリアは本殿が4つ建ち並ぶ、まわりとは別の区画になります。そのエリア内に入るとまず1本、その後も数本のクスノキの巨樹が立っていました。
冒頭紹介した楠珺社に向かう道中に、書物を納めている御文庫(おぶんこ)と呼ばれる白い蔵があります。この前にも1本立っています。
住吉大社には数多くの巨樹だけでなく、見どころもたくさんあります。
慶長年間の頃に豊臣秀頼によって奉納されという石舞台です。厳島神社、四天王寺にある石舞台とあわせて「日本三舞台」のひとつで、重要文化財に指定。現在でも毎年5月になると、雅楽の演奏と舞が見られるイベントが開かれています。
楠珺社周辺に立つ3本の巨樹の周辺には、赤いのぼり旗がたくさん掲げられ、そこには「初辰まいり」という文字が大きく書かれていました。楠珺社はお稲荷さんが祭神ですから赤いのぼり旗は分かります。でも「初辰」という言葉、みなさんはご存知ですか。
楠珺社は特に商売繁盛に強い神社であり、初辰とは毎月最初に迎える辰の日のことだそうです。その「はつたつ」という言葉が「はったつ」に転じ、「商売発達」を求める大阪商人が、定期的にお参りにきているとのこと。ちなみに辰の日は干支にちなんだ暦であり、12日ごとにきます。
住吉大社は楠珺社のように、境内に別の祭神を祀る神社が数多くあります(摂社、末社といいます)。楠珺社だけでなく、他の末社にも商売繁盛に強い神社があり、これらの神社を初辰の日にすべてお参りすることを、「初辰まいり」というそうです。
神社建築史上最古の様式とされ、国宝建造物でもある第一本宮から第四本宮まで4つの本殿が建ち並ぶエリアの雰囲気は別格でした。自宅近所にある氏神を祀る神社のそれとは一線を画す、まさに神々しい雰囲気です。巨樹に興味がある方はもちろん、神社仏閣好きにも、魅力的な場所だと思います。
住吉大社公式Webサイト:http://www.sumiyoshitaisha.net/