フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

日比谷公園のイチョウ

 

日比谷公園が開園したのは、1903年明治36年)です。日本が、今日の近代国家の礎を築いている時代背景の中、日本初のドイツ式洋風近代公園として開園しました。公園を設計したのは、時代の先端を歩んでいた2人の偉大な人物。「公園の父」と呼ばれ、現東京大学農学部を主席で卒業した、本田静六(ほんだせいろく)氏(林学博士)と、助手本郷高徳(ほんごうたかのり)氏です。本田静六氏は、北は北海道・大沼公園から、南は福岡・大濠公園、さらに東京・明治神宮の設計にも携わりました。

 

日比谷公園の大きな特徴として、立地の良さが挙げられます。横には皇居があり、JR東京駅から、歩いていくことも可能(約20分)。そのため園内には大小いくつもの野外音楽堂が設けられ、イベントを頻繁に開催し賑わっています。私が訪れたこの日も、イベント設置準備の真っ最中でした。テントを設置する人、オーディオ機器を取り付ける人、ショーの打ち合わせをしているタレントさんなどの姿を見ることができました。

 

一方で立地の良さが災いとなり、時代の波をもろに受けてきた公園でもあります。開園2年後にはポーツマス条約に反対するデモ隊の決起集会場となり、「日比谷焼打事件」が勃発。1971年には、沖縄返還協定に反対するデモが開かれ、園内にあるレストラン「松本楼(まつもとろう)」が焼失する被害を受けました。

 

ただ関東大震災の際には避難所として活躍した一面を持っています。昨今では「年越し派遣村」が設置された場所として、メディアを賑わしました。日本の高度成長を、まさに肌身で感じてきた公園と言えるでしょう。

 

日比谷公園のイチョウ

 

松本楼」の脇には、「首かけイチョウ」というイチョウの巨樹が立っています。レストラン前に堂々と立つその姿は、散歩で公園を訪れた人の足を止めるパワーを持っているだけでなく、レストランで食事をする人たちの、心を癒す効果もあるようです。

 

日比谷公園のイチョウ

 

首かけイチョウの樹齢は約400年、幹周り約6.5メートル。以前は現日比谷交差点脇にあったそうですが、道路拡張工事の際に伐採されそうになったため、本田静六氏が移植したと伝えられています。「私の首にかけてこのイチョウの樹は守る」と同氏が発言したことから、「首かけイチョウ」と呼ばれているそうです。

 

松本楼」は、毎年9月25日に10円カレーを販売することで有名です。ですが、このイベントの実は「チャリティー」イベント。10円ではなく、多くの寄付金を集めることをレストランは望んでいます。大きなイチョウの樹を見ながら、初秋の心地よい風を感じ本格的なカレーを頂く。その対価として、気持ちよく募金をしたいものですね。