フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

あきる野・養沢神社のトチノキ

以前紹介した奥多摩・奥氷川神社と並んで、西多摩に数多くある神社の中で歴史ある神社のひとつに数えられている養沢神社は、その歩みの長さからなのでしょう。数々の逸話が伝えられています。

まず、日本武尊ヤマトタケル)に関する逸話です。ヤマトタケルが東征していた旅路で、養沢神社に立ち寄り、病んだ身体を静養したそうです。養沢神社は辺りを山に囲まれ、御岳沢(みたけさわ)と大岳沢(おおたけさわ)の合流点にあり、「幽境」という言葉が似合う自然豊かな環境。この環境が良かったのでしょう。尊の病はたちまち治ったことから、その後、現在の養沢という地名となり、同時に地元住民が祀っていた神様を合祀して、社殿を建てたと伝えられています(現在は新しい社殿に変わっています)。もちろんヤマトタケルも祭神として奉祀されています。

聖徳太子に関する逸話もあります。先のヤマトタケルと同じく聖徳太子時代の朝廷が東征を進めていた折、アラハバキ荒吐)という東北地方に古来より伝わり、謎が多い神様を信仰する東北地方の民を追い詰めたのが、この養沢の地だそうです。ただ、戦の決着が付いた後はこの地で安住しなさいと温情をかけ、その結果、彼らはこの地に住み始めます。同神社ではアラハバキも祭神となっていて、聖徳太子を称えた石碑を祀ってあります(確認できませんでした)。さらに、その一族を見守る目的で、養沢の近く桧原村・小岩という集落に、大和朝廷の一族が住んでいたとも。

養沢神社への道のりは、JR五日市線の終点、武蔵五日市駅から養沢キャンプ場行きのバスに乗り、終点の1つ前、大岳鍾乳洞入り口バス停目の前です。

養沢神社

石段を登ると、中国神話に登場する2匹の立派な龍神様が参拝者を迎えてくれます。2匹は兄弟もしくは夫婦とされていて、社殿を背に右側の龍が伏羲(ふくぎ)で陽神(男性)。

養沢神社

左側の龍が女鍋(ちょくわ、じょか)で陰神(女性)と言います。

養沢神社

伏羲の方が体躯が大きく、いかにも男性的という印象を持ちます。ただ伏羲と女鍋は本来蛇であり、また、なぜ同神社に龍を祀ったのか。聞けば、神社近くに幼い頃住んでいた元氏子の方が、2匹の龍を夢の中に見たんだとか。その方が個人的に2匹の龍を神社に収めたそうです。

養沢神社のトチノキ

根元から地上数メートル付近まで、苔に被われているトチノキの樹齢は約400年。樹高約32m(現在は手入れ直後のためそれほどありません)。幹周り約6mを誇り、都内で最も太く、関東地方でも最大クラスのトチノキといわれています。

養沢神社のトチノキ

枝張りが見事な樹と聞いていたのですが、私が訪れた日は、なんと手入れをした後。樹の後に写っている神社総代の方に話を伺うと、あまりに樹勢が良いので、2010年末に手入れをしたとのこと。もちろん時期や手入れ方法は専門家に任せたそうです。

手入れ当日は、大きなクレーン車が2台がかりで枝切りを進めていったそうで「これほど立派な巨樹を切るのは初めて」と木を切る職人さんはおっしゃっていたそうです。

下の写真は、以前の様子を知る間野友輔さんからお借りしましたものですが、うわさどおり、立派な枝張りです。

養沢神社のトチノキ
養沢神社のトチノキ

巨樹ということで手入れをせず、その結果倒木してしまうケースもありますから、今回の手入れを機にトチノキはさらに元気に幽境の地で暮らしていくことでしょう。