フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

大泉井頭公園に立つ2本のマルバヤナギ

大泉井頭公園は、練馬・板橋区内、埼玉県和光市を通り、荒川水系新河岸川(しんがしがわ)に合流する白子川(しらここがわ)の上・両岸部分にあります。川に沿っているため公園のかたちは細長く、幅は広い部分でも20メートルほどで、全長は約350メートル。川を覆うようなコンクリート製の、大きく平らな橋が架かっているのも特徴です。駅からだと遠い、公園の端(南側)部分に白子川の源流(七福橋付近)があります。

 

大泉井頭公園のマルバヤナギ

 

公園が開園したのは1965年。以前は豊富な泉が湧き出る、現在の公園と同じように細長いかたちをした井頭池(いがしらいけ)があったそうです。1600年代中ごろにはお堂が建つ中島(池の中にある島)があり、地域の氏神である弁天様が祀られていました。お堂が何度も火災に逢うことから「焼け弁天」と呼ばれ、残念なことに現在その姿を確認することはできません。その後、何度か祠が祀られたそうで、地域の古老の中には祠の姿を見たことがある人物もいるんだとか。さらに弁天様の好意により、悪童が改心したという昔話が、この辺りでは伝えられています。

 

大泉井頭公園のマルバヤナギ

 

現在の白子川は氾濫対策として、直線的に整備され、川の両岸をコンクリート壁で固められています。結果、雨水が流れ込まない川となりました。そのため地下から湧き出る水のみが流れる川になり、雨量の少ない時期には水量がかなり減るそうです。源流部分では川に降りれるようにと、公園からスロープが設けられています。川面まで降りて湧き水を見たかったのですが、私が訪れた時期はちょうど雨量が少ない時期で、確認することはできませんでした。源流部分では水の流れはほとんどなく、「池」という印象を持ちました。

 

大泉井頭公園のマルバヤナギ

 

ただ、川に生い茂る草や気持ちよそうに泳ぐカルガモや鯉、水面いっぱいに群がるアメンボの姿を見ると、ぱっと見はコンクリートに囲まれた人工的な川であっても、湧き水が流れ出ている清流であることが分かります。

 

大泉井頭公園のマルバヤナギ

大泉井頭公園のマルバヤナギ

 

 最寄り駅は西武池袋線大泉学園駅」および「保谷駅」で、どちらの駅からも歩いて10分ほどです。練馬区特有の迷路のような路地をくぐりぬけ、川、そして公園に向かいます。途中、白子川を愛する地元民の看板を発見しました。遺跡の存在を示す看板もあり、太古より人の暮らしがあった地域であることが分かります。

 

大泉井頭公園のマルバヤナギ

 

公園に沿って川の上流に進んでいくと、大きな2本の樹が見えてきます。枝がしなり、風になびくスマートな樹とのイメージが強い一般的な柳とは違い、がっちりと、どっしりとした見た目が、マルバヤナギ(丸葉柳)の特徴です。

 

大泉井頭公園のマルバヤナギ

大泉井頭公園のマルバヤナギ

 

2本の樹は、前出の弁天様を祀るお堂の裏に建っていたと伝えられており、井頭池・白子川を形づくる豊富な湧き水が、2本の樹を育てたといえるでしょう。古老の話によると、以前2本の樹の根っこは川のほとりまで達していたそうですから、よほどおいしい湧き水なのでしょうね。

 

樹勢は良好そうです。2本とも駅から向かって対岸に立っていて、橋の近くにある樹(下流側)の方が大きく感じました。幹周りは2メートルほど、高さは約6メートル。上流側の樹は、根元部分の幹は2メートルを超えるほどの太さですが、すぐに2本の幹に分かれます。その後はそれぞれが、1~1.5メートルほどの太さとなり伸びています。樹高は下流の樹よりも高く9メートほど。どちらも練馬区天然記念物の指定を受けています。

 

大泉井頭公園のマルバヤナギ

 

下流の樹は、根元から1メートルほどの位置で直角に曲がり、地面と平行した幹から8本ほどの幹が垂直に伸びる独特な形状をしています。樹齢は不明ですが、人間の“しわ”のようなごつごつとした樹の表面から、老木であることが推測できます。

 

大泉井頭公園のマルバヤナギ

 

川および公園の両側には住宅が立ち並び、樹のそばには、子ども用の遊具が多く設置されています。私が訪れた日も元気いっぱいに遊ぶ子ども、乳母車に乗った赤ちゃんの姿がありました。いつまでも地域住民から愛される、川・公園として在り続けてほしいと思いました。

 

■参考文献

 :『みどりと水の練馬』 練馬区土木部公園緑地課出版

練馬区教育委員会生涯学習部生涯学ほか著 郷土資料室ほか著『ねりまの昔ばなし』

練馬区教育委員会出版

練馬区編集『ねりま50年の移り変わり』 練馬区出版

 

■情報提供元

白子川源流・水辺の会:http://www.geocities.jp/sirako_river/