フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

昭島・拝島公園にある「拝島・千歳のフジ」

拝島公園には史跡がいくつもあり、新東京百景に選ばれています。拝島大師(はいじまだいし)、大日堂(だいにちどう)、円福寺(えんぷくじ)、普明寺(ふみょうじ)、日吉神社などで、過去には辺りに8つの院が建っていたことから、大日八坊(だいにちはちぼう)と総称されています。近隣にある滝山城主に仕えた家臣・石川土佐守が、目を患っていた娘の治癒を願い、洗って治したと伝えられる「おねいの井戸」という史跡もあります。

最も歴史ある大日堂の創建は天歴6年(952年)ですから、その歴史は1000年を超えています。「千歳のフジ」の由来は、その字の如く樹齢1000年のフジとのこと。寺の歩みと共に、この地に根ざしてきた樹であることが分かります。

由緒ある一方で、園内には一般の公園と同じように、子どもが喜ぶ遊具があり、夏になれば市民プールが開催されるなど、今では地域住民にとって憩いの場として親しまれ、千歳のフジも近頃は「拝島のフジ」と呼ばれることが多いそうです。

拝島・千歳のフジ

公園へはJR青梅線拝島駅」から立川駅北口行のバスに乗り、「第一小学校前」で下車、徒歩2分の距離です。国道16号線東京環状)と奥多摩街道に囲まれた場所にあり、多摩川も近いことから、自転車や車でも訪れやすく、川沿いに走るサイクリングロードからわずか数分です。

拝島・千歳のフジ

樹齢約800年、根元の幹周約3m(太い側)、樹高約2.4m。フジ棚の広さは約263㎡あり、40本の支柱で棚が形成され、都の天然記念物指定となっています。水場を好むフジがそばを流れる湧き水を求め、この地に自生したと伝えられています。

拝島・千歳のフジ
拝島・千歳のフジ

フジ棚に近づくと、フジの花独特の甘い香りが漂い、棚の下に入ればその香りは一層増します。見上げれば、太陽光という自然のバックライトを浴び、藤色の名にふさわしい上品な紫色が際立った蝶型の花に、目と心をしばし奪われました。

拝島・千歳のフジ
拝島・千歳のフジ

房の長さが1mを超えるものもあれば、短い房のフジもあります。公園の管理者によると、このフジ棚には2種類のフジが混合しているとのこと。長い房を持つフジは、地面に近い側の花はまだつぼみなのに、上側の花はしおれているといった様子が見られました。

拝島・千歳のフジ

棚の下には花見客がくつろげるようにと、ベンチが用意されています。写真を撮ったり、お弁当を食べる人などの姿があり、あたり一帯にはおだやかな空気が流れていました。

拝島・千歳のフジ

ただ数年前には樹勢が弱まり、まったく花を咲かせない年もあったんだとか。たしかに2本の主幹をよく見ると、どちらもかなりの老木であることが分かります。

拝島・千歳のフジ
拝島・千歳のフジ

2006年に樹勢回復のためにと、地域住民、造園組合、昭島市が一致団結して、「拝島・千歳のフジの花を咲かせる会」を発足します。以降、土壌を改良し、枝を定期的に剪定するなどして樹勢の回復に努め、今日のフジの姿があるとのことでした。

実際、現地で毎年花見に来ているという方にお話を伺うと、以前はあまりの元気のなさに、樹はフェンスで囲われ、花も咲いていなかったそうです。「今は大分良くなりましたよ」とにっこりと微笑んでいました。

会の人たちの努力により、これからも素敵なフジ棚を見せてくれることでしょう。