府中・大國魂神社に立ち並ぶ巨樹
東京大神宮、靖国神社、日枝神社、明治神宮と共に「東京五社」に数えられる大國魂神社は、JR府中本町駅、京王府中駅どちらから歩いても5分ほどの場所にあります。
神社の広さは1万5000坪ほどで、東京ドーム約1個分です。辺りは大きなスーパーマーケットや住宅が建ち並ぶ市街地で、駅が近く交通量の多い旧甲州街道沿いに位置しており、人・車の往来が激しいです。
ですが、そのような都会の喧騒を忘れさせてくれる多くの巨樹が、境内には立っています。まさに「都会のオアシス」「鎮守の杜」という言葉がぴったり。参道を生活の道として利用している人も多く見られ、地域住民にとってはなくてはならない存在だと感じました。このような地域の人との関わりは、神社の歴史を知るとより深く知ることができます。
創建は111年。景行天皇(けいこうてんのう)が神からお告げを受け、武蔵国(現在の東京・埼玉の大部分と神奈川の一部)の鎮守として、大国魂大神(おおくにたまおおかみ)を祀ったのが起源とされています。
「府中」という地名は全国に点在し、国府があった名残です。大化の改新(645年)で武蔵国の国府がこの地に開所されたのを機に、近隣にある6つの神社の神を合祀し、総社となりました。それからはまさに武蔵国の中心地として歩み、現在に至っています。
府中本町駅から神社に向かって歩いていくと、本堂裏付近にある3本の巨樹が目に飛び込んできます。
東京都で2番目の太さを誇る、樹高23メートル、幹周り9.1メートル、枝幅20メートルの大イチョウのです。貫禄たっぷりで、横綱級という言葉がぴったり。私がこれまで見てきた巨樹の中で、ナンバー1のインパクトでした。
その大イチョウのすぐ側に立つ、樹高28メートル、幹周り5メートル、枝幅22メートルのムクノキもかなりの大きさです。ただ大イチョウのインパクトが強すぎるため、それほどの迫力を感じません。ところが根元に目を向ると、びっくり。まるで象の足のようながっしりとした根がありました。
境内で一番の太さを誇るケヤキは、いま紹介した2本とは離れた、府中本町駅側にある車のお祓いを行う駐車場に、樹高29メートル、幹周り7.2メートル、枝幅9.5メートルという大きさで立っています。
数字だけ見るとかなりの巨樹なのですが、樹全体のバランスのよさ、他の巨樹の迫力に押されてか、なんだか駐車場内にひっそりと佇んでいる印象を持ちました。ですが近くに寄ってみると先ほどのムクノキと同じく、しっかりとした根が特徴的です。
3本の巨樹すべての大きさは、今から約20年前のデータです。そのため現在では、もっと成長していると考えられますから、特にムクノキに関しては、現在、東京一の大きさである可能性が高いといえます。ただ同神社のムクノキは環境省・巨樹データベースに登録されていないため、順位については曖昧となっているのが現状です。
本殿から京王府中駅に向かって約500メートル続く参道脇には、国の天然記念物指定をケヤキ並木としては唯一受けている、「馬場大門(ばばだいもん)のケヤキ並木」があります。
ケヤキ並木の起源ははっきりとしていませんが、旧甲州街道沿いの大鳥居の両側に立つ、樹高7メートル、幹周り6.8メートル 枝幅16メートルの巨樹は江戸時代より立っているといわれ、神社への参拝者を迎えてくれます。
他の樹と同じく20年ほど前に調べられたデータでは、両方ともほぼ同じ大きさとのことですが、実際に見た感じでは、ケヤキ並木から神社に向かって右側の樹の方が大きく、樹勢も良好に見えました。ただどちらの樹も毎日大量の排気ガスを受けているでしょうから、今後の成長が心配です。