フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

矢島稲荷の大ケヤキ

矢島稲荷の歴史は大ケヤキと同程度の約700年と考えられ、信仰深い氏子が、個人の祠として建立したとされています。実際、矢島稲荷が立つ場所は矢島さんという方の私有地です。稲荷も大ケヤキも個人の所有物ですから、稲荷を訪れる際には配慮が必要です。

矢島稲荷の大ケヤキ

京王線府中駅」から徒歩5分。もしくはJR「府中本町駅」から徒歩10分ほどの位置にあり、府中街道甲州街道、そして以前紹介した大國魂神社から府中駅に向かって伸びている、同神社の参道、馬場大門のケヤキ並木(ばばだいもんのけやきなみき)に挟まれた駐車場の一角にあります。

矢島稲荷の大ケヤキ

樹齢約800年、樹高約17m(現在はもう少し低そうです)、幹周り約9.55mで、府中市の天然記念物指定です。都内では最大の幹周りを誇るケヤキで、練馬・白山神社の大ケヤキ、御岳山・神代ケヤキと並び、都内で3本指に入るケヤキとしても広く知られています。

根元から2つの幹に分かれていて、太い方の幹は訪れる者を圧倒する存在感を放っています。

矢島稲荷の大ケヤキ

江戸時代の天保6年(1835年)、安政6年(1859年)に二度、そして戦後の昭和28年(1953年)にと、合計三度もの火災に遭ったため、幹の中が空洞になってしまったそうです。確かに、焼け焦げた痕が確認できました。

矢島稲荷の大ケヤキ

現在、空洞の中にはコンクリートが詰まっているとのこと。太い幹は腐朽が進んでいて、樹木医の診断を受け、さらにコンクリートで補強するなどの治療が施されています(茶色く見える部分はすべてコンクリートです)。

矢島稲荷の大ケヤキ
矢島稲荷の大ケヤキ

しかし腐朽の進行は止まらず、数年前には落下防止のためにと、太い幹から伸びていた唯一残っていた大きな枝を伐採。樹の根元には、これまで同じようなことが何度も繰り返されてきたのでしょう、伐採された幹が置かれていました。

矢島稲荷の大ケヤキ

樹勢が弱ってくると付きやすいキノコも見られます。

矢島稲荷の大ケヤキ

しかし樹の上の方に目をやると、わずかですが緑の葉を広げる枝葉も見られ、まだ、生命の営みは終わっていないことが分かります。また細い方の幹の樹勢は良好です。照りつける真夏の日差しを気持ち良さそうに浴び、まだまだ長生きするぞ。そんな風に、訴えているように思えました。

矢島稲荷の大ケヤキ

ケヤキはスギやクスノキと並び、長寿として知られている樹です。なかには樹齢1500年を超える樹も確認されています。たとえ太い幹が枯れたとしても、まだまだ長生きし続けることでしょうし、そう、願いたいと思います。