フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

本郷弓町のクスノキ

最寄り駅である営団丸の内線・都営大江戸線本郷三丁目駅」から徒歩5分。JR御茶ノ水駅・水道橋駅からも歩いて10~15分ほどという、まさに都会のど真ん中に立つクスノキです。実際、樹のそばにはマンションやオフィスビルが立ち並んでいます。

本郷弓町のクスノキ

樹齢約600年、樹高約20m、幹周り約8.5mの堂々たる姿は、近くを走る幹線道路・春日通りからも眺めることができ、文京区の保護樹木に指定されています。

本郷弓町のクスノキ

以前紹介した大雄寺のクスノキは、辺りが墓地という環境下で存分に枝葉を伸ばし育っている印象でしたが、本郷のクスノキは成長のパワーを幹に蓄えている印象で、太く、どっしりと地面に根を張った姿が印象的です。

本郷弓町のクスノキ
本郷弓町のクスノキ

樹がまだ若い江戸時代の頃、そばのマンションが立つ場所には楠木 正成(くすのき まさしげ)という武将の子孫、甲斐庄(かいのしょう)という旗本の屋敷がありました。屋敷は大正時代に解体され、駒澤傳吉氏という駒澤銀行の頭取をしていた人物の所有に移り、木造2階建の和洋折衷が見事な自宅を建築します。その後1942年に中山家の所有となり、現在に至っています。

1980年には建物の一部を改造して、「楠亭」というフレンチレストランがオープンします。大正時代に建てられた風情ある雰囲気の中での食事は、当時の人々の憧れだったそうです。

本郷弓町のクスノキ

現在では「パークハウス楠郷臺(なんごうだい)」というマンションに建物は変わりましたが、レストランはそのまま在り続けます。2006年からはペジーブルという同じくフレンチレストランに装いを変え、今ではブランジェリー(ベーカリー)が加わり、近所のパン好きなファミリーが訪れる街のスポットに。私が取材に訪れた当日も、子どもと一緒にパンを求めるお母さんの姿がありました。

マンション管理者やレストランの方にお話を伺うと、現在、このクスノキは住人が協力して、管理・維持しているとのこと。マンションの維持管理費から費用を捻出して剪定するなど、その維持に努めているそうです。

本郷弓町のクスノキ

そのためクスノキを気に入って入居を決める方がほとんどなんだとか。つまりこのクスノキは、マンション住人に愛され見守れている樹なのです。

今後もたくさんの居住者の愛情により、まだまだ元気な姿を私たちに見せてくることでしょう。