フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

葛飾八幡宮の千本公孫樹

八幡宮という名が付く神社は、日本各地に約4万4000社あり、大分県宇佐市にある宇佐神宮(うさじんぐう)が総本社になります。祭神は八幡神(やわたのかみ)で、應神天皇(おうじんてんのう)と同一です。應神天皇は数多くの地溝をつくり灌漑を進め、国内の産業を活発にした功績から、殖産興業の神として崇められるだけでなく、海外から経典をもたらすなど、文学の神様としても広く知られています。母である神功皇后(じんぐうこうごう)は、女帝であったのではないかとの説があるほどのたくましい女性で、妊娠中にも関わらず朝鮮半島に出兵、見事勝利しました。その後、無事に赤ちゃんを出産したことから、武運・安産祈願の神様として、広く知られています。

葛飾八幡宮ではこの2つの神様の他に、育児の神様として信仰されている、玉依比売命(たまよりひめのみこと)も祭神として祀っています。現在の千葉県北部下総国(しもうさのくに)を守護する総鎮守として、寛平年間(889年―898年)に創建されました。

神社への道のりは、JR総武線本八幡駅」から徒歩8分。あるいは京成線「八幡駅」から徒歩5分の距離で、国道14号線から神社に向かって一直線に続く、約250mの参道を通っていきます。京成線の線路が参道を横断していたり、鳥居が2つあるのも特徴的です。

葛飾八幡宮の千本公孫樹

千本公孫樹は参道から本・拝殿を眺めた、右側に位置しています。

葛飾八幡宮の千本公孫樹

樹の前には、ご神木のご利益にあやかろうとする人たちがかけた絵馬が数多くあります。

葛飾八幡宮の千本公孫樹
葛飾八幡宮の千本公孫樹

樹齢は神社の歴史と同じと伝えられていますから、1000年以上になります。樹高は約22m。幹周りは根元部分が約10.2m。目通り(地面から1.3mの高さ)部分が約10.8mで、根元よりも目通り部分での幹が太く、国の天然記念物に指定されています。

葛飾八幡宮の千本公孫樹

過去の落雷により主幹が折れ、ひこばえ(樹の根元部分から生える枝。主幹が弱った時に生えることが多い)が数多く生えたために、まるで千本もの枝があるような特異な樹形となりました。ですがひこばえも立派に成長し、今では枝といよりも多くの木が集まっている印象を受けます。

葛飾八幡宮の千本公孫樹

雄株老イチョウの特徴である、気根(空気中に出た根、「きこん」という)を見つけました。

葛飾八幡宮の千本公孫樹

気根はその見た目から「乳(ちち)」とも呼ばれ、出産後の女性から信仰されています。同神社の祭神のご利益に、ぴったり合う樹というわけです。

千本公孫樹は、江戸時代後期に書かれた「江戸名所図会(えどめいしょずえ)」でも紹介されています。書に書かれているエピソードでは、数十匹の白蛇が毎年行われる祭りの賑わいに乗じて、樹の根元から出てきたんだとか。縁起のいい白蛇ですから、その後、千本公孫樹に対する信仰心が高まったことはいうまでもありません。

神主さんからは、10年ほど前に樹の中にある空洞に、ヘビが住んでいる姿を実際に見たとのお話が聞けました。祭りは毎年9月15日に開催されていますから、その日を楽しみに樹を訪れる人の姿も、きっとあることでしょう。

葛飾八幡宮の千本公孫樹

老木であり主幹が折れてしまったイチョウですが、全体的に樹勢は良好で、これから春にかけて葉をたくさん付ける枝先には、つぼみの姿が数多く見られました。まだまだこれからも元気な姿を、私たちに見せてくれそうです。