フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

丹沢山地に立つ中川の箒杉

山北町(やまきたまち)は、面積の約90%が丹沢大山国定公園と県立自然公園という、丹沢山地の自然に恵まれた町です。温泉旅館や民宿、キャンプ・バーベキュー場などが充実し、年間100万人を超える観光客が訪れます。

なお先日韓国で開催された、世界陸上競技選手権大会に出場していたマラソンランナー、尾崎好美選手の出身地でもあります。

箒杉へのアクセスは東名高速道路・大井松田ICを下車後、国道246号線丹沢湖方面に。あるいはJR御殿場線谷峨駅(やがえき)」からバスに乗り換え30分ほど。丹沢湖に注ぐ河内川(こうちがわ)沿いのゆるやかなワインディングロードを上っていきます。次第に道幅が狭くなりトンネル数も増加。山の上の方にきていることを感じます。

丹沢山地

箒杉のレリーフが施されたトンネルを過ぎ「箒杉」バス停で下車すると、訪れる者を迎えてくれているような、山の斜面に立つ箒杉が目に飛び込んできます。


中川の箒杉

推定樹齢約2000年、幹周り約12m、根回り約18m、樹高約45m。スギの特長である天に向ってまっすぐに伸びるというよりは、太い主幹でがっしりと斜面を掴み、どんと腰を降ろしている印象を持ちました。

中川の箒杉
中川の箒杉

以前紹介した五柱神社のスギの幹周りが約8mですから、いかに箒杉が大きいかが分かると思います。その迫力から関東でも屈指の巨樹とし広く知られ、国の天然記念物指定に。神奈川県内最高齢の樹ともいわれています。

箒杉との名前の由来は、姿が箒に似ているから。辺りが箒沢という地名だから、といった説があります。箒沢の地名は「宝木沢」に由来するともいわれ、江戸時代の頃にこの辺りには巨樹も含め、価値ある樹が多くあったそうです。そこで幕府が所有地として管理。スギ、ヒノキ、ケヤキ、モミ、ツガ、カヤの伐採を禁じます。

近年になると道路整備や木材調達の目的で樹は伐採されていきますが、なぜか箒杉だけは残ります。その理由は定かでありませんが、ご神木として地域住民から崇められていたからだといわれています。実際、樹の根元には小さな祠、樹の横には熊野神社があり、樹のある場所が集落のシンボルであることが窺えます。

中川の箒杉
中川の箒杉

1972年の集中豪雨による災害では、箒杉が土砂を食い止め箒沢集落を守ったと伝えられていて、住民は以前にもまして町のシンボルツリーとして親しみを持ちます。そのような歴史からか、現在は地元自治体が樹の管理をしています。

中川の箒杉

山側の幹には大枝が折れた痕跡がありますが、これは2003年夏の台風のよるもの。しかし枝が折れた後すぐに、樹木医、造園業者による治療が施され、写真のように修復されています。

中川の箒杉

遠くから箒杉を眺めると、過去の大けがをまったく感じさせない、樹勢の良さを示す枝葉がてっぺんまで生い茂っています。

次回は箒杉だけでなく、トレッキングや温泉を楽しみ、地元の宿にゆっくりと泊まってみたいと思いました。