フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

奥多摩・大丹羽の里に立つ輪光院のツガ

ツガは、一般の方にはあまり馴染みのない樹だと思いますが、建材をはじめとして、船舶材、楽器などに利用されています。モミの樹と外観が似ていて、同じマツ科に属し、実際に山では混在して分布しているようです。

 

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目指す巨樹へのアクセスは、JR青梅線「川井(かわい)駅」から歩いて30分ほど。駅を降り、眼下を流れる多摩川を左手に、駅前の交差点を右折。多摩川の支流、大丹羽川沿いの道を上っていきます。

 

樹の眼下に広がる大丹羽川沿いには、昭和31年(1956年)に開所した大丹波川国際虹ます釣場があり、アクセスへの道標となってくれます。

 

本数は少ないですがバスも出ており、その際は北川橋バス停で降車すれば、樹まではバス停から歩いてわずか5分ほど。バス停を降りると、大丹羽川沿いに伸びる釣り場と共に、前の山の尾根に目指す樹の姿を望むことができます。

 

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大丹羽輪光院のツガ

 

以前はツガの周りに人工林があったそうですが、現在は伐採されたために、里側斜面の地表がむき出しになっています。また2011年末にはこの開けた場所を利用し、巨大なイルミネーションが点灯されました。

 

大丹羽輪光院のツガ

大丹羽輪光院のツガ

 

輪光院は桃山時代以前に創建された古刹ですが、正確な年代は不詳。現在は住職不在の無人寺となっていて、地元の方が管理しています。しかし、お堂脇から樹への道が整備されていて、案内板もあります。遠くからではそれほどの巨樹に見えなかったのですが、近くに行ってみると、どうして。尾根先の崖にしっかりとゴツい根を張って立ち、眼下に広がる集落を一望する凛とした姿に、以前訪れた丹沢山中「中川の箒杉」を思い出しました。

 

大丹羽輪光院のツガ

大丹羽輪光院のツガ

 

樹に関する情報が少なく、樹齢に関しては分かりませんでした。そばに立つ案内板によれば、樹高約32m、幹周り約3.7mとのこと。古の頃より里に住む住人から親しまれ、神様の樹として崇められてきたエピソードも、真相ははっきりしませんでした。

 

ただ尾根に沿って伸びる重厚な根のそばに、2つの小さな祠があること。樹の立つ位置が、眼下の集落を見守っているように見えること、など。逸話が生まれたことに頷ける雰囲気が漂っていました。

 

大丹羽輪光院のツガ

 

樹の根を保護する柵やサークルなどは特になく、そばまで寄ることができます。根元に立ち、見上げれば、上に向かうほど樹皮の色が白っぽくなり、モミと似ていることが確認できます。

 

大丹羽輪光院のツガ

 

大丹羽輪光院のツガ

 

葉の形状もモミと類似していますが、多くの枝葉が崖の先まで飛び出て成長しているため、はっきりとは確認できませんでした。樹勢は良好です。

 

祠には、御神酒やお賽銭を供した跡があります。樹と祠に合掌し、帰路につきました。