フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

練馬・白山神社に立つ2本の大ケヤキ

白山神社は、都営地下鉄大江戸線・西武豊島線「豊島園駅」から、徒歩5分ほどのところにあります。辺りには十一ケ寺(じゅういちかじ)という由緒ある寺院や住宅が立ち並び、穏やかな雰囲気が漂っています。駅の反対側にある遊園地・豊島園の喧騒を感じることは、神社の周りではありません。

 

白山神社と名の付く神社は、全国に2700カ所ほどあり、石川県、岐阜県の境に位置する「白山」に宿る神を祀る神社です。「白山に宿る神」とは菊理媛神(くくりひめのかみ)ですが、ここ練馬白山神社では、日本国を創造したとされている、伊邪那美命(いざなみのみこと)が地域の氏神であったことから、主祭神(しゅさいじん=神社が主として祀っている神)として祀っています。

 

他の神社でも両神を共に祀っているところはあります。日本神話によると、伊邪那美命が夫である伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と口論になった際、白山の神が仲裁に入ったと伝えてられていますから、特別な間柄にある神だったことが想像できます。 

 

2本の大ケヤキは永保3年(1083年)、源義家(みなもとのよしいえ)が、「後三年の役(ごさんねんのえき)」で奥州へ向かう際、戦勝祈願で植えたとされています。

 

神社は石段で上段と下段部分に分かれています。下段の方が広く、25メートルプールほどの大きさです。上段は細長く、拝殿があります。大ケヤキはそれぞれ1本ずつ石段近くに立ち、どちらも国の天然記念物指定を受けています。下段の樹の方が大きく、正面から神社を見るとまず目に飛び込んでくるのも下段の樹です。

 

白山神社に立つ2本の大ケヤキ

 

下段の樹は樹高約19メートル、幹周り約8メートルで、神主さんの話によれば、パワースポットとして昨今は人気があるそうです。私もこの樹を見た瞬間、数分間足を止め、樹を見入っていました。そして私と同じように樹の前で数分間足を止めている参拝者の姿を、実際に見ることもできました。

 

白山神社に立つ2本の大ケヤキ

 

一方、上段の樹の大きさは樹高約14メートル、幹周り7.2メートル。下段の樹と比べると小柄ですが、大きなコブが特徴です。コブについては以前の記事でも触れましたが、生命力の象徴。私が訪れた時期は真夏でしたので、どちらの樹もたくさんのみどりの葉を木の枝がしなるほどつけ、風が吹くたびに“さわさわ”と、心地よい音を奏でていました。樹勢は良好のようです。

 

白山神社に立つ2本の大ケヤキ

 

ただ2本の樹は一時、台風の強風により倒れそうになったり、病気にかかったりと、元気がなかった時期がありました。心配になった神主さんが練馬区に協力をお願いし、1989年から専門家による治療がスタート。倒壊を防ぐ支柱を設置し、土壌殺菌のために土の入れ替えを行い、悪玉菌を殺し善玉菌を増やす処置をしたりと、懸命な治療が続けられたそうです。

 

白山神社に立つ2本の大ケヤキ

 

本来の位置にない根を正しい位置へと導く「不定根誘導」なる処置も施され、最初の治療から20年経った今では、2本の樹はすっかり元気になったと、長い間樹を見続けてきた神主さんは、うれしそうに話してくれました。

 

白山神社に立つ2本の大ケヤキ

 

樹の生命力が評判を呼び、パワースポットとしての人気に加え、「安産神社」としても脚光を浴びているんだとか。2本の大ケヤキの前に立っていると、そんな妊婦さんの気持ちに納得するのでした。