あきる野深沢・山抱きの大カシ
「山抱きの大樫(やまだきのおおかし)」へのアクセスは、JR五日市線の終点「武蔵五日市駅」より歩いて40分ほど。なお駅前には、レンタサイクルショップもあります。整備された一般道ですが上りがずっと続き、かなりハード。ただ案内板がところどころに設置され、迷うことはありません。地域にある美術館のキャラクター、森の妖精ZiZi(ジージ)も案内してくれます。
樹へ向かう山道は、以前は特に整備されていませんでした。その上、樹が急斜面に立っているため、地元の人以外はあまり触れる機会がなく、知られてもいなかったそうです。しかし深沢自治体やあきる野市が町おこしの一環として協力、樹までの登山道を2010年に整備。今では10分ほど山を登れば、樹へアクセスできるようになりました。
竹林を過ぎ、急斜面を登っていくと、スギ林の間から大きな岩の上に、まるで鎮座しているかのようなカシが見えてきます。その姿は拍手(カシワデ)を開いたような、あるいは、うちわをクロスしたような印象を持ちました。
岩と樹のまわりには、危険防止および樹保護のための柵があり、その柵に沿って1周することができます。山頂側にまわってみると、幹周り約6.5mのたくましい根元が2つに別れ、それぞれの太い幹を形成し、その姿が拍手のように見えていることが分かりました。
集落を望む側はかなりの急斜面で、崖となっています。このような厳しい環境に立っていますが、ナンテンとのコラボレーションには心が和みました。
推定樹齢300年。東京都の天然記念物指定となっている石灰岩をガッチリと掴んでいる様は、まさに「山抱き」という名にふさわしい存在感。よくぞこのような厳しい場所に数百年も立っていたなと、驚きと共に感心しました。
正確にはウラジロガシという種類で、その名のとおり、葉裏が白いのが特徴です。国内では温暖な地域を中心に広く分布し、もとからある森林・山林を形成していた木でした。しかし人が山に入るようになってからはその数が減り、地域によっては準絶滅危惧種に指定されています。
ただ眼下の地元住民から愛され、自由に育ってきたとの印象が強いこのカシにいたっては、その心配は無用だと感じました。葉のみどりも鮮やかで、幹は伸び伸びと育ち、中には“くるり”と円を描いている枝も。樹勢は良好です。
これからも深沢集落のシンボルツリーとして、この地での暮らす人々を見守り続けることでしょう。