フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

あきる野市・広徳寺に立つイチョウ、タラヨウ、カヤ

広徳寺は応安6年(1373年)に創建されました。正式名称は臨済宗龍角山廣徳寺(りんざいしゅうりゅうかくざんこうとくじ)。茅葺屋根が見事な総門、山門、本堂を中心とした約4ヘクタール境内は、東京都史跡に指定され、仏像などの文化財も多くあります。 

 

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寺までの道のりは、JR五日市線の終点「武蔵五日市駅」から徒歩30分ほど。五日市盆地西側の山麓にあり、寺は秋川渓谷を見渡すような高台に位置しています。

 

広徳寺

広徳寺

広徳寺

広徳寺

 

総門をくぐり山門の前に立つと、対のイチョウと落葉で染まった見事な黄色い地面が目に飛び込んできます。山門をくぐれば、そこは落葉したイチョウ葉の黄色いカーペットが一面に広がる絶景。葉の匂いが漂うほどのボリュームでした。

 

私が訪れた時はまさに落葉の最盛期。風が吹く度に多くの黄葉が“サワサワ”と音を立て舞い落ち、その光景はまるで映画のワンシーン。私だけでなく周りにいた方も皆、感嘆の声をもらしていました。さらに、その光景を演出するかのような寺の鐘の音が聞こえてきた時には……。言葉に表せない風情を感じずにはいられませんでした。

 

それほどの巨樹ではないためか、特に指定は受けておらず、樹のサイズなどを示す案内板はありません。しかし、参拝者を迎えるかのように参道を挟んで対に立っていること。以前紹介した善福寺「逆さイチョウ」のように、枝が垂れ下がっていること。幹が高い地点ほど太く、さらに突然主幹がなくなり、その様子がまるでコウモリがマントを広げたように見えること、など。特徴が多い樹ということで、人気を集めています。実際、樹のシルエットだけ見ると、一般的な樹とはかなり違うことが分かります。

 

広徳寺

広徳寺

 

広徳寺

 

気根や幹表面の様子から、かなりの老木であることが分かりますが、どちらの樹も銀杏をたくさんつけ(特に本堂に向かって右側の樹)、樹勢そうです。

 

広徳寺

 

広徳寺

 

本堂裏は散策路となっていて、カエデ類の黄葉が見事でした。またここから見えるイチョウも、趣があります。

 

広徳寺

広徳寺

広徳寺

 

本堂裏には、樹高約19m、幹周り約2.5m、樹齢不明。都内最大のタラヨウ(多羅葉)が立っていて、枝張り約15mの元気な枝葉には、たくさんの赤い実がなっていました。タラヨウの葉は大きく厚く、葉裏に先の尖ったもので字を書くと、跡が黒く残る特徴を持っています。そのため古来には手紙として利用され、現在は郵便局のシンボルツリーとして親しまれています。

 

エピソードを知っている人が書いたのでしょう。このタラヨウの葉裏にも、文字を書いた跡が多く見られましたが、この樹は都の天然記念物指定でもあります。文字を書くことは、控えたほうがいいでしょう。

 

広徳寺のタラヨウ

広徳寺のタラヨウ

 

本堂脇のさら地のような場所には、樹高約24.5m、幹周り約5.4m、樹齢不明。多摩地方最大のカヤがあり、こちらも都の天然記念物指定を受けています。

 

広徳寺のカヤ

広徳寺のカヤ

 

次回は落葉中ではなく、黄葉をたくさんつけたイチョウ、あるいは新緑と史跡とのコラボレーションといった別の光景を見に、寺を再訪したいと思います。