フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

丹沢湖そばに佇む「頼政神社のトチノキ」

頼政神社は、自然豊かな丹沢山地にあります。以前紹介した「中川の箒杉」も同じく丹沢山地にありますが、箒杉は丹沢湖に注ぐ北側・河内川(こうちがわ)沿い。一方、頼政神社は、湖の南側に位置する三保ダム(みほダム)から流れ出る川沿いのそば、ひだまりの里というキャンプ場近くにあります。

 

頼政神社

 

神社へのアクセスは、公共機関を利用する場合は御殿場線谷峨駅(やがえき)」で下車しバスに乗り変え、神縄バス停から徒歩5分ほど。自家用車などを利用する場合は、東名高速道路大井松田インターチェンジから国道246号線丹沢湖方面に進み、ひだまりの里を目指します。

 

小じんまりとした神社ですが、訪れてすぐには、トチノキがどこにあるのか気づきませんでした。そこで境内を見渡すと、趣が漂う本殿の裏にある山の斜面にへばりつくように、トチノキは立っていました。

 

頼政神社のトチノキ

頼政神社のトチノキ

頼政神社のトチノキ

頼政神社のトチノキ

 

樹齢約350年、樹高約25m、幹周りは約4.7mで、神奈川県の指定天然記念物に指定されています。また、中川の箒杉、建長寺のビャクシンなどの巨樹が名を連ねる「かながわ名木100選」にも選ばれています。

 

頼政神社のトチノキ

頼政神社のトチノキ

頼政神社のトチノキ

頼政神社のトチノキ

 

10年ほど前の台風の影響で、主幹の先端が折れてしまいます。そこで樹木医指導のもと、折れた個所からダメージが広がらないための、蓋をする治療が施されました。治療の甲斐あって、今では幹も枝葉も元気よくなり、ケアも特にはしていないとのこと。人の手を広げたような大きく独特の形の葉と、山側の幹にびっしりと生える苔のような植物が印象的でした。

 

トチノキは大きく成長する特徴から、家具や楽器の材料として重宝されてきました。クリに似た感じの実は、デンプン、タンパク質を多く含み、そのままでは渋くて食べられないそうですが、渋抜きをすることで、食用にもなるんだとか。

 

そのため古来には、食料に乏しい地域で食べ物が実る樹として重宝されてきたとの逸話があり、森林伐採の際には、トチノキだけは切らない風習が残る地域もあったそうです。

 

頼政神社のトチノキにも、あたりが食糧不足に陥った際、地域住民がその実を食べ生き延びたエピソードがあると聞きました。しかし地元で生まれ育った同神社の宮司さんによれば、「聞いたことがないんですよね(苦笑)」。神社名の頼政にかんしても「あたり一体に源氏にまつわるエピソードが数多く残っていますから、何かしらの関係はあるのでしょうが、正確な文献は残っておりません」。

 

ただこのようなエピソードとは関係なく、トチノキはこれからも丹沢の地で成長を続けることでしょう。