フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

吉川英治記念館のシイノキ

 JR青梅線二俣尾駅(ふたまたおえき)」より徒歩15分ほどのところにある吉川英治記念館は、大正から昭和にかけて活躍した国民的文学作家・吉川英治が、家族と共に1944年~1953年までの9年間を過ごした場所です。彼が名づけた草思堂(そうしどう)という愛称でも親しまれています。

 

彼の没後、業績を後世に伝えようと、吉川英治国民文化振興会、吉川家、講談社が協力し、もともとあった母屋や仕事場である書斎に加え、原稿や文化勲章などを収めた展示室を建て、広く一般に開放し現在に至っています。大人500円の入館料が必要です。

 

吉川英治(よしかわえいじ)記念館に立つシイノキ(椎の木)

 

シイノキは、入門口を通り抜けた前にある母屋から左手に広がる、同館のシンボルともいえる草思堂庭園の一角に、燦々と輝く太陽の光を浴び気持ちよさそうに立っていました。

 

庭園をぐるりと散策できる遊歩道があり、樹は360度どこからでも見ることもできます。季節の草花や小川など趣があり、吉川英治がこの地を愛した理由に納得です。

 

吉川英治(よしかわえいじ)記念館に立つシイノキ(椎の木)

吉川英治(よしかわえいじ)記念館に立つシイノキ(椎の木)

 

特に、書斎から見える樹のシルエットは印象的で「シイノキは、吉川英治の仕事ぶりをずっと見守っていたんだろう」と感じずにはいられません。晴れた日は樹の下に座り、奥様がたてたお茶を飲み、くつろいでいたとのエピソードも残っています。

 

吉川英治(よしかわえいじ)記念館に立つシイノキ(椎の木)

吉川英治(よしかわえいじ)記念館に立つシイノキ(椎の木)

 

展示室ロビーからの景観も抜群でした。庭園は緩やかな勾配があり、その小上がり部分にしっかりと根を張っている姿も印象的です。

 

吉川英治(よしかわえいじ)記念館に立つシイノキ(椎の木)

 

樹は2本あり、書斎側の方が大きく、案内板および館長さんのお話では、樹齢は500~600年ほど。太さは不明ですが、樹高は約14m。指定は特に受けていません。老木のためケアを受けていて、担当樹木医は、日本初の樹木医と呼ばれた山野忠彦氏。

 

山野氏は、全国各地の名木1200本以上を診察した業績が称えられ、同館を運営する先述団体から、吉川英治文化賞(文化活動に取り組んだ人物や団体に贈られています)を獲得。その受賞がきっかけで、このシイノキの診察を行っていたそうです。現在は亡くなられています。

 

吉川英治(よしかわえいじ)記念館に立つシイノキ(椎の木)

吉川英治(よしかわえいじ)記念館に立つシイノキ(椎の木)

 

木漏れ日が差し込む樹勢の良い枝葉を見上げると、幹には2つの丸い穴が。なんと、10年程前まではこの穴の中にムササビが住んでいて、愛くるしい顔を見せていたんだとか。

 

吉川英治もムササビの姿を見ていたのだろうか……」そんな思いにふけながら、同館でゆったりした時間を過ごしました。