雲取山付近の巨樹
東京・埼玉・山梨の境界に立ち、東京一の標高2017mを誇る雲取山付近の巨樹を紹介します。
最初の樹へのアクセスは、JR青梅線「奥多摩駅」からバスで約30分。東日原バス停で下車し、日原鍾乳洞方面に15分ほど歩いた道路脇の両崖に立つ「水垂れのトチノキ(栃の木)」「水垂れのモミノキ(樅の木)」です。
向かって右手の崖に立つのがトチノキで、樹高約23m、幹周り約5.3m、推定樹齢は200年とも500年ともいわれていますが、正確には不明です。道路脇から樹の根元までのアクセス路があるのですが、かなりの急斜面に立っているため、短いとはいえかなりハードです。
一方、向かって左手の崖に立つのがモミノキで、こちらへのアクセス路はないようでした。水垂れという肩書きの由来は、そばに湧き出る湧き水に由来しているようです。
道を進み突き当たりを雲取山方面の左手に向かいます。林道を歩くこと約40分。右手の崖下に流れる川沿いに目指す巨樹は立っています。
樹高約31m、幹周り約7.1m、樹齢は不明。「ガニ沢出会いのカツラ(桂)」が川沿いにある巨岩に鎮座するように、堂々と立っています。
日原川とガニ沢が合流する地点にあるため、このようなユニークな名前がついたとのこと。真夏の強い太陽の日差し、豊富な水量を誇る川の水、生命力を感じる葉の淡い緑、これらのバランスが絶妙で、私も木にならい川の水で精気を潤すと共に、しばしあたりの心地よさに浸りました。
雲取山方面に向かい日原林道を進むこと約1時間20分。大ダワという林道の分岐点に着きます。ここから林道を下ること約30分。長沢谷(ながさわだに)という沢が流れる山間の谷底そばに、目指す2本の巨樹はあります。
沢から林道を少し登った広けた場所に立つのが、樹高約25m、幹周り約6.1m、推定樹齢約300年の長沢谷のカツラです。先ほどのカツラもそうですが、カツラは渓流そばを好んで育つそうです。
さらに林道を登ること数分、樹高約15m、幹周り約6.4m(現在はそれほどありません)、推定樹齢約400年の「長沢谷のミズナラ(水楢)」が、急斜面の林道にまるでゲートように斜めに立っています。
ただ残念なことに、3本ある大枝のうちの麓・沢側の1本が、数年前の台風の影響で折れてしまい、そばにはその折れた大きな枝が横たわっていました。しかし見あげれば元気そうな葉っぱがたくさん。樹勢は良好そうです。
最後に紹介するのは、雲取山山頂から雲取山山荘方面に下ること40分ほど、先に紹介した大ダワ林道終点近く、尾根を挟む樹の反対側は埼玉県という場所に立つ、「雲取山大ダワのアララギ(イチイ(櫟、一位)とも言います)」です。
1800m前後という標高に立つ巨樹ということで、全国的にも珍しいようです。樹高約20m、幹周り約4.4m、推定樹齢約600年。樹表は以前ご紹介した倉沢のヒノキに似た感じで、優しい表情をしていました。林道を塞ぐように立っていて、根元には鹿が皮を食べないための対策ネットが巻いてあります。
見晴らしの良い場所に立ち緑一色に覆われた奥多摩の山々を眺めると、まだまだ私たちの知らない巨樹が、このどこかで成長しているんだろうな、そんなことを考えるのでした。
注意:大ダワ林道は中央付近で崩落があり、現在通行禁止となっています。今回紹介した巨樹は分岐点からそれぞれ近いためそれほど危険なルートではありませんが、くれぐれも先への通行は自粛ください。また、雲取山への登山は基本的に日帰りが難しく、山頂付近の山荘もしくは山小屋に泊まるなど、訪れる際には事前の入念な準備・計画が必要です。