愛知県刈谷市「乗蓮寺のスダジイ」
名鉄本線「富士松駅」で降り、交番を右手に駅前ロータリーを歩いていくこと数分、スダジイの巨樹が立つ乗蓮寺(じょうれんじ)があります。寺の歴史などはわかりませんでしたが、あたりには古い民家が立ち並び、喧嘩はまったくなし。駅前ということを忘れてしまうほどの静けさが漂っています。
スダジイは、山門をくぐった左手、墓地との堺に囲いで保護され立っています。真夏だというのに枯れが目立ち、葉の緑色もくすんでいたり斑点模様だったりと、一目見ただけで樹勢がよくないことがわかりました。焼けのような跡も見られます。
根元を見ると、完全に2つの幹に分かれていました。脇には、以前は3本あったのでしょうか、2本と同じくらいの太さの枯れて倒木もしくは伐採された幹も置かれています。
支柱に支えられた枝葉を見上げると、折れを手入れした跡が見られ、保護されていることがわかります。
案内板がないため正確な数字はわかりませんが、樹高約10メートル、幹周り約6.1メートル、推定樹齢は800年とも伝えられていて、市の天然記念物となっています。
境内とは反対側、日陰となる墓地側から樹を見ると、あまり好ましくない感じで苔がびっしりと生え、空洞も見られました。
しかし、これまで紹介してスダジイ(シイノキ)の多くも、枯れや折れなどが目立つ状態でありながらも数百年を生き、それでもなお立ち続ける巨樹が少なくありませんでした。浄蓮寺もスタジイも、同じような歩みを辿ることを願うばかりです。
樹の根元には、どこかで見たことのあるような石像がありました。腰が曲がった風貌は、まるでスダジイの代弁者として「まだまだのんびりと生きていくよ」。訪れる者に話しかけているようにも感じました。