フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

高源寺の地蔵ケヤキ

関東鉄道常総線稲戸井駅(いなといえき)」より、北に歩くこと20分ほどの場所に、高源寺はあります。平将門が承平元年(931年)に創建されたといわれています。

 

地蔵ケヤキは、境内に入る前から分かるほどの大きさで、山門から本堂に向かって左側、樹の根を保護するために設けられた柵に囲まれ、どっしりと他の2本の巨樹と並んで立っています。最奥がケヤキで、他は2本ともスダジイです。

 

高源寺の地蔵ケヤキ

高源寺の地蔵ケヤキ

 

今から約370年前、本堂が火災に遭った際に飛び火がケヤキにも移り、幹が焼け、現在のような根本から約7mの高さまで残る、空洞が生じたといわれています。

 

高源寺の地蔵ケヤキ

 

柵に沿って歩き、山門とは反対側へ向かうと、空洞の様子がはっきりと分かり、まるで外皮だけ残っているような印象を受けました。地蔵ケヤキの由来であるお地蔵さまが、空洞が祠のように祀ってあります。

 

このお地蔵様、お寺の方に伺っても「いつだれが祀ったかは分からない」とのこと。しかしお地蔵様は子どもを守る存在ですから、いつの頃から自然と子育てや安産を願う女性が多く訪れる信仰のスポットになったようです。奥に見える穴をくぐり抜けると、よりご利益が得られるとのエピソードも生まれました。現在は、根本への立ち入りはできません。

 

以前紹介した「影向の松」「倉沢のヒノキ」と並んで、全国各地の象徴的な巨樹を選出する「新日本名木100選」に、1990年に選出されます。その結果、今では女性に限らず大勢の方が訪れる巨樹として親しまれています。

 

樹齢約1600年、樹高約15m、幹周り約10mで、常陸太田市にある若宮八幡宮ケヤキと共に県内最大級のケヤキで、県の天然記念物指定を受けています。幹が太いわりに樹高がそれほど高くないのは、火災に遭った樹ならではの樹形といえるでしょう。

 

一時は樹勢が衰えたそうですが、お檀家さんのなかに樹木医がいて、その方のアドバイスにより根を保護するための柵が1995年に設けられます。それから15年余り。今では元気を取り戻し、新緑の頃、鮮やかな枝葉を存分に伸ばしていました。

 

高源寺の地蔵ケヤキ

高源寺の地蔵ケヤキ


訪れた際は、小雨が降る夕刻という風情。「ゴーン、ゴーン」と、樹のそばにある鐘が太く重みのある音を響かせるなか、新緑の葉から垂れ落ちる雫を眺めていると、なんだか神妙な気分になりました……。