フリーライター『日日maika’i』

フリーライター杉山 忠義が書くブログです。

奥多摩町の古里駅・川井駅付近に立つ3本のイヌグス

 

イヌグスは日本各地の暖かい場所に分布するクスノキ科の常緑高木で、パッと見はこれまで何度か紹介しているクスノキと似ています。アボガドの樹と近縁であり、実際、果実の味も似てるといわれています。

 

イヌグス

 

JR青梅線「古里(こり)駅」から奥多摩駅方面に歩くことおよそ10分、春日神社に立つ古里附(こりつき)のイヌグスがあります。車の往来が激しい国道411号と線路に挟まれた狭い場所に窮屈そうに立っていて、樹を祀るために建てられた神社のような印象を受けます。

 

古里附のイヌグス

古里附のイヌグス

古里附のイヌグス

 

樹の生育には決してよいとは言えない環境のためか、それとも推定600年という樹齢のためか。根本付近の幹は枯れが目立ち、地上数m付近で大きく2つの幹に分かれていますが、道路側の幹は枯死しているようです。

 

以前は23mあった樹高も、現在は幹上部が欠落したために15mほど。しかし8mを超える幹の太さは全国でも有数で、東京都天然記念物に指定されています。また線路側の幹から伸びた枝の樹勢は良好のようで、線路にまで届きそうな勢いを感じました。

 

古里附のイヌグス

古里附のイヌグス

古里附のイヌグス

 

2本目のイヌグスは古里駅の北側、駅からも見える200mほどの距離にある、線路沿い民家の敷地斜面に立つ「小丹波(こたば)のイヌグス」です

 

小丹波のイヌグス

小丹波のイヌグス

小丹波のイヌグス

 

推定樹齢300年、樹高約25m、幹周り約4.6mで奥多摩町の指定天然記念物です。日当たりが良く、あたりは竹林や畑が広がり、落ち葉が敷き詰められた散策路も設けられています。整備された環境であると同時に、大切にされている樹だということが窺えます。樹の所有者宅にお話を伺うと、開村祝いに植えられたとおいエピソードが伝わっているそうです。

 

小丹波のイヌグス

小丹波のイヌグス

小丹波のイヌグス

小丹波のイヌグス

小丹波のイヌグス

小丹波のイヌグス

 

3本目、「梅沢のイヌグス」は古里駅のとなり、川井駅から徒歩10分ほどの山の斜面に立っています。アクセスには宝珠庵というお寺の裏からまわります。

 

先の2本のイヌグスと違い、鬱蒼とした山の中に立っていて、樹のまわりを巨大なスズメバチなど無数の昆虫が飛び交っています。人を寄せ付けない独特の雰囲気が漂っていて、森の主のような感じさえ覚えます。里側に向かって何本も長く伸びた触手のような枝も、さらにその雰囲気を増長させています。

 

梅沢のイヌグス

梅沢のイヌグス

梅沢のイヌグス

 

このような雰囲気の影響でしょうか、樹高約18m、幹周り約6mという数字以上に大きく感じます(樹齢は不明です)。樹勢は良好のようで、熱帯地域の樹に見られる板根(ばんこん)が確認でき、冒頭に書いた暖かい地方を好む樹であることが窺えます。奥多摩町指定の天然記念物となっています。

 

梅沢のイヌグス

梅沢のイヌグス

 

麓に住む樹の所有者宅にお話を伺うと、代々この樹を神様として祀ってきたとのこと。毎年交換する加護のお守りなどを樹の根本に置いているそうで、実際に確認もできました。もちろんこの習わしは所有者家族のみが行っています。さらにこの樹も村の開村記念に植えられたのでは、というエピソードが伝わっているそうです。

 

いまから数百年前、地域発展を祝して植えられた樹が大きく育ち、今では神様として大切に祀られている。なんだか神妙な気分になりました。